浅井 やっぱイギーポップかな。昔から知ってたけど、どういう人かは知らなかったわけ。友達の家で、「パッセンジャー」って曲のビデオ見て、すごく心を打たれた。かっこよかったね。
ーどういう風に？
浅井 すごい真剣っていうか、歌のことしか頭にない、余分なことは一切考えてないっていう。ホントのカッコ良さだなって。
ーいつの頃ですか？
浅井 ２４歳の冬。名古屋にまだいた頃だね。バンドのメンバーが見つからないんで、東京に出ていこうかって時。自分がやろうとしてた音楽はもう、頭の中にある段階だったんだけど、イギーを見て、「あーコレだよな！」って思った。「やっぱカッコいいもんはカッコいい、自分もこうあるべきだ」って。イギーの真似するとかいうんじゃなくて、自分流に、やっぱりコレはオレにも出来ると思った。コレは、っていうか、こういう感じだよな、っていう「感じ」がわかった。
ーアルバムとしてはどれがいいと思いますか。
浅井 ラスト・フォー・ライフかな。パッセンジャーが入ってるヤツ。
ーボーカリストとしてのイギーの魅力はどこにあると思いますか。
浅井 すごい感情がこもってるよね。他にも感情的な歌はいっぱいあるし、他にもいいと思う人がいっぱいいるけど、強いて一人挙げるとすればイギー・ポップ。
ーやっぱり感情っていうのは表現するにあたって、一番大切なものだと思いますか？
浅井 それはそうだと思う。感情だと思う。
ー浅井くんが曲を作ったり歌ったりするのは、自分の感情をみんなに伝えたいって気持ちなのかな。
浅井 そうだね。感情を伝えたいのかもしれないね。
ー他に同じような感じで好きな人っていうと？
浅井 ジョン・レノンとか、ショッキング・ブルーとか、ジャニス・ジョップリンの「サマータイム」とかザ・フーとかさ。
ーそういう人たちに、剥き出しの感情を感じる？
浅井 剝き出しっていうんじゃないけど、すごいその人の心を感じるよ、歌ってる時に。
ー自分がやってるときにそれは出せてると思いますか？
浅井 去年の夏から色んな人に見られるようになって、一番初めにテレビに出た頃、何も考えてなくて、あの時「感情」はすごく素直な部分だったんだと思うんだよね。それから色々、ツアーとかバーっと回ってるうちに、いろんな考えが自分の中に芽生えてきて、ほんで途中で、、ま、それは誰でも通る通過点だと思ってるんだけど、色んな余分なことを考えとった、ステージの上で。で、今回渋公、名古屋、大阪とやったこと、こんだけツアーを繰り返してきたことによって自分が、、「自分は何なんだろう？」って思ったときに、「オレの売りはステージの上だけなのかな」って、「ステージの上が一番いい」と思ったのね。で、オレもう今度のライブから全然普通にやれる、っていう感じするんだわ。
ー普段の自分と同じように出来る？
浅井 うん、普段っていうか、ホントに自分が思ってたカッコ良さでやれると
ーそれは、イギー・ポップがいいというのと同じ意味で？
浅井 うん。
ーどうしてそういう心境になれたのかな？
浅井 それは色々、、うん、時間の流れだと思う。
ー成長したってこと？
浅井 成長したのか、元に戻ったのか、開花したのかわかんないけど。今はカッコいいことが出来る、と自分の心、、頭ン中でわかってる。
ーどうして今まで、そこまでなれなかったんですか？
浅井 、、それはオレがアホだったからじゃない？(笑)なれた時もあったよ、それは。ワンステージのうち何曲かはね。自分でも後で「アレは良かった」と思えるときはいつもあったよ。だけど、それがずーっと続くわけじゃなかった。ダメな時も最低だった時もあったし、、だから、色んなのがあったよ。良くなったり、良くなかったり、色々しとった。自分、良くなったりとか、、だから歌を、人の前で歌を歌うんだね、オレは。たったそんだけのことなんだけど、、何が言いたいのかわかんなくなってきたわ(笑)
ー「もういいや」って開き直り？「カッコつけてもしょうがねえや」っていう。
浅井 それは違うよ。
ーそうじゃない？
浅井 うん、開き直りは絶対しない。ホントにすごいモノ、本物のコトをやったら、どんな人の心でも打てる思うんだよね。まあ、絶対そうなるとは言い切れんけどさあ。
ーでも、このあいだの渋公はすげえ良かったじゃない？
浅井 うん。みんな良かったって言ってくれたよ。余計なことを考えないでさ、演奏のことしか考えてなかったもんね。だから、、ステージに上がれば絶対に大丈夫だと思った。ホントの思ってる自分を出すだけだから。
ー今後ずっとそういう風に出来る自信が出てきた？
浅井 うん、それはどんどん、、凄く、今度のツアーはめちゃめちゃカッコいいもんになると思うよ。
１９９１年インタビュー
